アスベストとは石綿とも呼ばれており、天然に産出される繊維状ケイ酸塩鉱物のことです。1970年から1990年代に大量に輸入された歴史があり、保温や断熱、防音などの効果が高いため多くの建築物に用いられてきました。そのため、その時期に建築された建物にはアスベストが含有しているケースが多いようです。しかし空気中に飛散しているアスベストの吸入が原因で、悪性中皮腫や肺がんなどのリスクが高まることが確認されたため、これらが社会的問題のひとつとなっています。
現時点でアスベストを含む製品を製造、使用することは法的に禁止されています。そのため2005年以降に建築された分譲マンションでは違法工事を行っていない限りアスベストを含む可能性は低いでしょう。しかし2004年までは使用されていたということになるので、それ以前に建築されたマンションではアスベストの含有に注意が必要です。
大規模修繕を請け負う施工業者は事前にアスベストの有無についての検査や調査を実施し、その結果を管理組合に書面で説明しなければならないということが決まっています。そのため優良な施工業者であれば見積書に「大気汚染防止法におけるアスベストの事前調査費用」などと言った項目が含まれているはずです。また工事を実施する前にアスベストの事前調査の結果が書面で届いているため、内容などを必ず確認してください。
アスベストが含有しているかどうかは目視で判別することは、ほぼ不可能です。そのため専門業者が検査を行う必要があります。
万が一、事前調査の結果アスベスト含有建材が発見された場合、さらに詳しく建材の分析や大気測定などの検査が必要です。そのため大規模修繕工事の日数や費用が大幅に膨らむ可能性があります。またアスベストに対するマイナスイメージもあるため、住民や周辺住民に対する周知と理解が必要となるでしょう。
封じ込め工法と囲い込み工法は、除去工法よりも工期を短くすることが可能で、さらに費用を抑えることもできます。ただアスベスト自体は残存しているため、震災などが発生した場合、塗膜が剥がれるなどが起こり、アスベストが飛散するリスクがあります。もしも、そのことによって健康被害などを引き起こした場合には、賠償責任を負う可能性もあります。3つの工法のメリット・デメリットを考慮し、どの工法で実施するのか決定しましょう。その際に必ず住民説明会を開催し、調査の結果や処理方法、費用など包み隠さずに説明し、理解を得ることが大切です。
アスベストを処理するための費用は、部位や量、形状、天井の高さなど様々な条件によって異なります。一概には言えませんが、相場は1㎡あたり約15,000円~85,000円程度なので想像以上に高額の費用が発生してしまうでしょう。ただしマンションのある自治体によって、アスベスト含有調査費やアスベストの除去工事の費用を一部ですが補助する制度を設けている自治体もあります。アスベストの調査をすることになった場合、マンションのある自治体の助成金について一度確認をして下さい。契約後では申請が出来ないことも多いので早めに調べておきましょう。
アスベストは健康に被害を引き起こす可能性がある素材で、以前までは多くの建物を建築する際に使用されていました。そのため2005年以前に建築された建物に関しては、アスベストを含む可能性もあると覚悟をしておきましょう。アスベストを除去する工事に関しては高額になってしまうため、助成金などを利用し少しでも費用を抑えるようにしてください。