ここではマンション大規模修繕を依頼する施工業者の種類とそれぞれ特徴や注意点について解説しています。
建物診断(現地調査)が終了して大規模修繕工事の内容が明確になったら、次に依頼する工事会社を決める必要があります。
大規模修繕を行う会社は最初から決まっているのでは?と思うかもしれませんが、発注先は大きく分けるとマンション管理会社、ゼネコン(マンションの総合請負業者)、修繕の専門会社の3種類があり、自由に選ぶことができます。
日頃からマンションの保守点検や小さな修繕を行なっている会社です。管理業務を行う中でマンションの状態を熟知していると考えられ、管理組合や居住者対応については安心感があります。その一方で工事を主とした会社ではないので施工管理能力が弱い面があります。
マンションを建設した総合建設業の会社のことです。マンションの新築工事を行っているため、その時の施工図や建物の詳細情報を持っていて下請けの専門業者とのパイプもあります。組織がしっかりしている安心感がありますが、会社によっては大規模修繕工事のノウハウがないことがあり対応にバラつきがあります。
マンションの大規模修繕を専門としている工事業者のことです。主に大都市圏を拠点に事業展開している会社が多く、施工実績が豊富で専門分野の工事についての技術力は高いと考えられます。注意点としては全国規模で事業展開している会社以外の場合、対応エリアが限られていることがあるのでサポート体制も含め事前に確認しておくことです。
すでに説明した通り、大規模修繕の依頼先は3種類ありますが、実際にどこが選ばれているかというと、これまでは建物診断からまとめて管理会社に依頼するのが一番多いケースでした。
マンションのことを一番良くわかっているのは管理会社だからそのままお願いしようというのがその理由として考えられます。
中にはいつの間にか管理会社に決まっていた、管理会社の方で勝手に進められてしまったということもあるようです。
しかしここで重要なことは意思決定の主体はあくまでも管理組合ということです。確かに管理会社に依頼すれば窓口が一本化できて楽な面もありますが、実際の工事は施工会社に丸投げで管理会社が間に入ることで工事費が割高になってしまうことも多いのです。
そこで最近では管理会社以外の選択が注目されるようになってきました。特に大規模修繕の専門会社に依頼すると、費用が安い・修繕技術が高い・工期が短いというメリットがあるため選ばれるケースが増加しています。
もちろんこれを行うには管理組合がしっかりしていることが前提となります。リストアップした工事業者の中から会社の経営状況、大規模修繕実績、評判などを精査して管理組合主導で決定しなければなりません。
自分たちが住むマンションにとって何が一番大切なのかを十分検討して客観的に判断することが必要です。
大規模修繕工事を依頼する業者を選ぶ際には、できるだけ客観的な目で冷静に判断することが必要です。では具体的に管理組合としてどのような点に注意すればよいのか、重要ポイントについてご説明しましょう。
マンションの大規模修繕は工事が終了しても業者との付き合いは続きます。次の大規模修繕工事は約10年後になりますが、その間も定期点検を行なって不具合が発生した場合は補修してもらわなければなりません。
ということは、少なくとも10年間は存続可能な会社かどうかを調査しておく必要があります。途中で連絡がとれなくなるようなことがあると、マンションの維持に支障が出てしまうからです。業者の会社データを簡単に入手する方法は、その会社のホームページを確認することです。資本金や従業員数、設立年、沿革など基本的な情報を知ることができます。
しかし、それだけでは会社の経営状態まで判断するのは難しいでしょう。上場会社であれば財務状況まで公開されていますが、それ以外は業績などの詳細データまで掲載されていることが少ないからです。そこで役に立つのが帝国データバンクなどの企業信用調査会社の活用です。帝国データバンクでは業歴、資本構成、規模、損益、資金現況、経営者、企業活力の項目から評点をつけています。この点数を見ればその会社が優良かどうかわかるというわけです。
もちろん評点だけがすべてではありませんが、著しく評点が低い場合は債務超過などが発生していて経営状態がよくないことが考えられますので避けた方がよいでしょう。
大規模修繕工事をお願いする場合に気になるのは、やはり施工内容やサービスの質でしょう。
一般的な流れとしては、大規模修繕工事をスタートする前に行う建物診断で修繕箇所をチェックし、建物診断結果にしたがって工事計画を立て、修繕工事施工、その後アフターメンテナンスに引き継ぐことになります。コンサルティングに力を入れている施工業者では建物診断から依頼できますが、そうでない会社の場合は、建物診断だけ別の専門会社に依頼する必要があります。
大規模修繕工事の手順については、どの工事会社に依頼しても大差があるわけではありませんが、品質管理や安全面の配慮、住民対応など工事への取り組み方での違いはあるはずです。ISO9001取得による高品質な施工管理をしているか、検査はどのタイミングで行い専門部署を設置しているか、防犯設備の設置や落下物防止措置など安全・防犯対策ができるかなどもチェックポイントになります。
こうしたサービスの充実は実績や経験の積み重ねによって生まれるものですので、安心して任せられるかどうかの判断材料になります。
複数業者に相見積もりを取った後に、その内容を比較検討し2~3社まで絞り込みができたら、実際に業者を呼んで行うのがプレゼンテーション(ヒアリング)です。業者の工事に対する姿勢や考え方を詳しく確認するのが主な目的となります。主な確認事項は住民に対するケア、セキュリティ対策、保証・アフターフォロー体制です。
住民に対するケアに関しては緊急連絡先の設置はもちろん、掲示板等に全工程を掲示したり定期的な進捗報告などコミュニケーションが可能かどうかなどを確認します。セキュリティ対策は工事期間中の防犯についてです。足場を使って住戸に侵入される危険性があるので夜間施錠、センサーの設置、各戸に補助鍵の貸し出しをしてもらえるかなどを確認します。
保証・アフターフォロー体制に関しては事前に概要は調べることができるので、定期点検の頻度や万が一不具合が生じた際の保証はどのくらいしてもらえるのかなど詳細事項について確認します。
以上のような確認を業者との間でやりとりをしてスムーズな回答を得られ、わかりやすい説明をしてもらえるようならその会社は信用できると考えてよいでしょう。
大規模修繕工事ではそれぞれのマンションの担当者として、修繕業者から専属の現場代理人が設定されます。現場代理人とはいわゆる現場監督のことで工程管理、品質管理、安全管理、原価管理、労務管理、対外折衝、工事全般の顧客窓口が主な業務です。
つまり大規模修繕工事がスムーズに進められるかどうかは現場代理人の能力次第で変わってくるということになります。特にマネジメント力があるかどうかがとても重要になると考えてよいでしょう。また、工事上で何らかのトラブルが発生した場合は現場代理人とのコミュニケーションが必要になりますので資質や人柄の良さなども大切な要素の一つになります。
現場代理人の対応=業者とのやり取りそのものとなり、依頼することが決まれば数年間のお付き合いになります。対応が早くて親身になって考えてくれる現場代理人がいる業者を選ぶことが何よりも安心につながります。
マンションの大規模修繕を実施してくれる業者の中には、残念ながらも悪徳業者もいるのが現状です。例えば手抜き工事を行ったり、工事がスケジュールから大幅に遅れたりするなど、様々な事例が見られています。
大規模修繕にかかる料金は高額で、住民一人一人から徴収し、安全に暮らすために使用しなければなりません。しかし手抜き工事を行われてしまえば、安全性が高いマンションとは言えなくなってしまい、住人に危険が及ぶばかりか不動産価値を押し下げてしまう可能性もあります。ですから、手抜きなどを行う業者に引っかからないようにしてください。
どんなに信用している業者に依頼したとしても、素人は本当に手抜き工事が行われていないかは分かりません。手抜き工事を防ぐには常に現場監督のように工事風景をチェックするのがよいのですが、現実的に考えると難しいはず。写真を撮ってもらい、報告を受けるという方法が一般的です。そこでしっかりチェックポイントを押さえて、手抜き工事かどうかを確認してくださいね。
マンション側が知識豊富だと感じさせれば、悪徳業者をけん制して無理なことは行わせにくくできます。しっかり目を光らせていることをアピールしてくださいね。
ケレンとは外壁を塗り替えるとき、下塗り塗料が接着しやすいように古い塗料をはがして油分やほこり、錆などを除去する作業のことです。外壁で行う場合には高圧洗浄を実施しますが、金属部や木部に行う場合には、やすりなどで表面を削る作業となるようです。
この作業は仕上がりを良くするためにも、必ず行うのが基本。この作業を実施していない場合には、確実に手抜きです。
マンション大規模修繕などに関わらず、どのような工事においても塗料を付着させてはいけない箇所があります。誤って付着するのを防ぐため、その箇所をビニールなどで覆う作業が養生です。また外壁や屋根以外に塗料が飛んだりしないように、足場全体を養生シートで覆わなければいけません。
丁寧に養生を行えば、プロ仕様のキレイな塗装が行えます。逆に養生を綺麗にできないようであれば、手抜きと言えるでしょう。
素地の中には経年劣化などによって、欠損や割れている箇所があります。欠損や破損の場合には、修復するために変性シリコンなどで穴を埋める作業を実施しなければなりません。この下地処理を怠ると、破損が広がってしまう可能性が高まってしまいます。下地処理が終わって塗装処理の準備が整ったと言えますので、下地処理も行えないような業者は、手抜きを行う業者と考えても構いません。
塗装は下塗り・中塗り・仕上げ塗りの3段階に分けられるのですが、これら3回の塗装がしっかりされているか塗装中にしっかり確認しなければなりません。塗装を行った後からでは、確認ができなってしまいます。しかし、塗装現場を直接確認することは困難。そのため事前に塗装工事の進捗状況を、写真などを添付してこまめに報告してもらいましょう。そうすれば塗装業者を見張る必要もありません。
良心的な塗装業者の場合には、毎日何らかの報告書をメール等で送ってくれるようです。事前に報告についてのルールを明確化することでとで、より安心して作業を見守ることができるのではないでしょうか?
タイル補修は、専用のハンマーで1枚1枚打診検査を行うことで、補修の必要なタイルの正確な数を把握することができます。
本来であれば、見積もりよりも少ない補修枚数の場合は返金するのが基本です。しかし、中には、そのまま返金を行わない業者も多々います。この場合には管理組合が足場に出向いた方が防止しやすくなりますが、どうしても難しい場合には、検査の様子などの写真で確認してください。細かく作業を見守っている姿勢を相手にみせることによって、牽制する効果もありますよ。
手抜き工事の事例について紹介します。